independence-D 世界から日本へ、日本から世界へ音楽の新しい潮流を発信していく、
インデペンデント・レーベルのコンベンションindependence-D
independence-D
SHOW CASE LIVE
COMPETITION
TRADE SHOW
FORUM&SEMINAR
AREA MAP
INFORMATION
REPORT
SET LIST
TIME TABLE
STREET ROCK DAY
METAL/SHOCK ROCK DAY
HOME > REPORT > METAL/SHOCK ROCK DAY
REPORT
independence-D2007 STREET ROCKDAY
 ■PROFILE
<渡辺清之>
フリーライター。『EAT Magazine』『FOLLOW-UP』『AQUADIUM』等に寄稿。
その他、デス・メタルやブラック・メタルなどのエクストリーム・メタル及びメタルコア系を
中心としたアーティストのライナーノートを手掛けている。

昨年に比べステージ数が一つ減ったとは言え、
全てのバンドを見ようとするのはやはり至難の業。

とくにメタル / ハードコア・リスナーにとっては、
屋内のハート・スタージと野外のクローバー・ステージとに
注目のバンドがまたがっている事が多く、
結果として外と内を忙しく行き来する人の姿が多数見受けられた。

私もそんな中の 1 人だ。

この日集まったメタル / ハードコア・リスナーにとって
おそらく最高のトップバッターとなるハズだった
ロイヤル・トゥ・ザ・グレイヴは、メンバー急病のため残念ながら出演キャンセル。

いきなり出鼻を挫かれるが、
かわりにゼロ・リミテッド・エクスキューションを観るために野外ステージへ。

日の高い冬の空の下ながら、ゴシック調の妖艶さを漂わせ健闘していた。

屋内に戻り硬質な突進力をもつサイコビリーのロビン、

外へ出て強靭なデスメタリック・ハードコアのブレイク・ユア・フィスト、

また中へ入って様式美ヘヴィメタルのガルネリウス、

そして外へ出て叙情派ニュースクール / スクリーモのミコトと目まぐるしく動き回る。

野外ステージは規模こそ 3 ステージの中で一番小さいものの、
注目度では決して屋内に劣っておらず、
とくにカリフォルニアから参戦したミコトには多くの観客が集まり、
バンドもそれに応えて瑞々しい演奏を披露。

それに続くヘッドフォンズ・プレジデントは
ヘヴィな楽曲と演劇的なパフォーマンスでもって、
一度足を止めてしまうとステージの前から離れ難くなるほどの 緊張感を漂わせていた。


再び中へ戻ると古参スラッシュ・メタルのジュラシック・ジェイドがスタート。
バンドを牽引する女性ヴォーカリスト HIZUMI の圧倒的な存在感を前にして、
彼女らを知らない観客たちはみな息を呑んでいた。


存在感という点では続いてメインのスペード・ステージに立った
サイコビリーの重鎮バトル・オブ・ニンジャマンズも同等。

ユーモア溢れる MC で雰囲気を盛り上げつつタイトな演奏を叩きつけ、
年季と格の違いを示してくれた。

ニンジャマンズ終了と同時刻、
野外ではゾンビ・メイクのホラー・サイコビリー CRACKS がスタート。

人々は一気に移動を開始し、まるで民族大移動の如く駆けつけて行った。

それと入れ替わる形で、屋内ではサヴァイヴが登場し、
アグレッシブかつピュアなメタル・サウンドを爆音で響かせていた。


今回の出演陣の中でも一際異彩を放つ
台湾出身ブラック・メタル・バンドのソニックは野外ステージに登場。

コープス・ペイントと呼ばれる独特のメイクを全員が施し、
二胡という 2 弦ヴァイオリンのような珍しい楽器奏者を含む編成が、
多くの人の目を惹いていた。


この日出演のサイコビリー系の中でラストとなるスパイクを屋内へ覗きに行った後、
野外のベアボーンズへと移動。

夕方 17 時近くなると屋外はかなり風が冷たく、
長時間の鑑賞には辛い状況になってきていたが、

彼らの有無を言わさぬロックンロール・サウンドは寒風を力でねじ伏せていた。

いよいよ寒さを増した野外クローバー・ステージのトリを飾るのは
アメリカ東北ロードアイランド州から来たヒネリ系ハードコア・バンドのドーターズ。


ハードコア・ファンにとってこの日最大の悩みどころがこの時間帯で、
実はまったく同時刻に屋内ではモダン・オールドスクール・ハードコアの雄
エフシー・ファイブがスタート。

ライブ中に行き来をして両方確認しようと考えて
ドーターズを見始めたのだが、結果は失敗。

あまりにも破天荒かつ予測不能のライブをドーターズが展開したため、
一瞬たりとも眼を離すことが出来なかったのだ。
ギクシャクした展開の楽曲をキッチリとこなす演奏もさることながら、
とにかくヴォーカルのパフォーマンスが常軌を逸していた。
マイクや観客の拳やらを喉奥深くに咥え込んでは
勝手にえづいて涎を垂らしまくる様のインパクトは、正に反則級だ。


全ての観客が屋内へと集結し、いちだんと熱気が高まってきた中で登場したのは
オーストラリア出身のメタルコア・バンド、アイ・キルド・ザ・プロム・クィーン。

来日直前にヴォーカリストが脱退してしまい、
急遽サポート・メンバーでの来日となったためライブが不安視されていたが、
若さにまかせたパワフルなステージングを目の前にしては、
それが杞憂だったと認めざるを得なかった。

スペード・ステージにカリフォルニアのブリーディング・スルーが登場すると、
メタル系ファンの興奮はこの日の最高潮に達した。

ツアーで鍛え上げられた演奏力は見事の一言で、
広いステージに見合った力量が彼らに備わっていることは誰の目にも明らかだった。
惜しむらくはメタル・ファンの多くがここで帰路についてしまったことだ。

ハート・ステージのトリを務めたストューピッド・ベイビーズ・ゴー・マッドは、
ドーターズとはまた別の意味で破天荒極まりないパフォーマンスを繰り広げており、
見れば確実に記憶に焼きついた事だろう。

まったく、ヴォーカルはこの日ステージ上よりも
フロアにいた時間の方が長かったのではないだろうか?

 ■総論

そもそも「 METAL/SHOCK ROCK DAY 」と銘打たれたこの日の内実は、
“メタル”や“ショック・ロック”というカテゴリーでは
到底括りきれない多彩な出演陣が揃えられている。

その出演陣を分け隔てなく楽しむのは、簡単なことではない。

“異文化交流”なる標語の下で日本と海外のバンドの交流は盛んだが、
異ジャンル交流は遅々として進んでいないのが現状だ。

「 independence-D 2007 」は、昨年に比べ日数が 3 日間から 2 日間へ、
ステージ数が 4 つから 3 つへと変更され、一見すると規模が縮小されたかにも思える。

けれど、このイベントの趣旨がインディペンデントなレーベルのサポートであると同時に、
異なるジャンルのファン層をリンクさせる事にもあるとしたら、
その機能は徐々に作用し始めていると感じられた。

例えば、ジュラシック・ジェイドが自分たちのことを
「元祖ヴィジュアル系」と呼んで若い観客の興味を惹く姿や、
バトル・オブ・ニンジャマンズが自分たちのことを知らない観客を
積極的にライブに巻き込んで盛り上げていく姿は、
異ジャンル交流の模範と言えるものだろう。

そして、何気なく通りかかったサイコビリー・ファンが
ベアボーンズのライブに魅了されて足を止めて見入ったり、
メタル・リスナーがヴィジュアル系と呼ばれるバンド群にも
メタルに通じるものを感じ取ったり、
少なからぬ人が新しい発見をこの日の会場で得ている様子が
其処彼処で見受けられたのも印象的だった。

また、コンペティション・ライブの部門で参加した
ブレイク・ユア・フィストとヘッドフォンズ・プレジデントの 2 バンドに、
かなりの注目が集まっていたことも特筆すべきだろう。

集まったのは、普段から彼らを応援している熱心なファンよりも、
バンドの音は知らないが存在だけはかねてから気になっていた
という人々が多いようだった。
この 2 バンドにとって「 independence-D 」への参加は、
確実に有意義なものとなったハズだ。

インターネットの急激な発達に伴い大量の情報が氾濫し、
音楽シーンの有り様も大きく様変わりし始めている。
けれど、やはりライブという“生”の体験には、変え難い魅力が今でも息衝いている。

ドーターズやストューピッド・ベイビーズ・ゴー・マッドのハプニング的パフォーマンスは
その場に居合わせてこそ楽しい。

異ジャンルの交流、新しい発見、そしてライブの魅力。
こういったものを一度に提供できる場として、
「 independence-D 」には今後も更なる期待をしていきたい。