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音楽コンサートやスポーツイベントのチケットの不正転売を禁止する『チケットの高額転売規制法案』(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律案)が12月8日、参議院本会議で全会一致で可決され、成立した。この法律では興行主の事前同意を得ず、定価を超える価格で転売することを禁止。QRコードやICカードを利用した電子チケットも含み、インターネット上での不正な転売が対象になっている。さらにコンサート会場周辺などでチケットを転売する、いわゆる「ダフ屋行為」も違反の対象に含まれ、違反した場合には、1年以下の懲役や100万円以下の罰金を科す規定が盛り込まれており、来年6月に施行される。
日本音楽制作者連盟、日本音楽事業者協会、コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会の音楽関連4団体は、2015年からチケット高額転売対策の一環として、法整備へ向けた活動を継続してきた。昨年の12月、チケット転売サイト最大手「チケットキャンプ」が、商標法違反および不正競争防止法違反の容疑で、捜査当局による捜査を受けて大きなニュースになったが、そこからわずか1年での異例のスピード成立となった。
世論の後押しも大きかった。人気コンサートやイベントの入場券がネット上で高く売られ、転売による利益を狙った大量購入が横行していると社会問題化し、多くのアーティストが連名で意見広告を出広したり、シンポジウムに出席して訴えるなど、音楽ファンをはじめ、多くの人から大きな注目を集めていた。また、東京オリンピック・パラリンピックのチケットが、来年春から販売されるのを前に、国際オリンピック委員会からもダフ屋、転売ヤー=ネットダフ屋、の規制を求められていたことも、背景にはある。イベントやスポーツ会場など、公共の場でのダフ屋行為は各都道府県の迷惑防止条例などで禁止されているが、ネット上の転売は公共の場に当たらず、取り締まりが容易ではなかった。そこで、ネットを含め、ダフ屋行為を全国一律で規制する新規立法が早急に必要だった。
しかしこれは始まりの一歩に過ぎない。この法律の正しい解釈を周知させなければ、法律を作った意味がない。「転売」そのものを禁止していると勘違いしている人も多い。そうではなく「ダフ屋行為」を禁止しているということをわかりやすく、きちんと、そして広くアナウンスしなければいけない。たまたま、事情でそのコンサートに行けなくなった人のための「不要チケット対策」は、しっかりやるべきだ。この点はすでに音楽業界団体公認のチケットリセール(二次販売)サービス「チケトレ」や、正規版のサービスがスタートしているが、さらに進化させていかなければいけない。また、これもすでに導入している興行主がいるが、入場時の厳格な本人確認措置をとるなどの対策に乗り出す必要がある。“絶対ダメ!”と声高に叫ぶだけでは、不正転売の根絶は難しい。チケットを売りたい人がいれば、一方でどんな手を使ってでも、自分だけは少しでもいい席で見たいというファンがいる。そういう消費者がいる限り、需要と供給の関係が成立している限り、興行主側の本気度の高さや、消費者側のモラルが試される法律でもある。
チケット転売問題
https://www.tenbai-no.jp/
公式チケットトレードリセール「チケトレ」
https://tiketore.com/
TEXT:田中久勝
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