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参加レーベルが昨年の20から今年は8に絞られ、より厳選された感があるレーベル・ナイト。2年連続の参加となるCoa Records が、開催初日にイヴェントを行った。
トップ・バッターは、くるり主催のレーベルからリリースされたコンピレーション作品に参加したことでも話題のFREDELIQ。サウンド・デザインが生む幻想的な波紋。それは時にかげろうのように揺れながら、時にアグレッシヴに表情を変え、立体的な空間を生み出してゆく。ヴォーカル・斉藤は体全体で世界観を表現。夢の中から聞こえてくるような、でも確実に目の前で歌われている歌が、しんしんとしみわたる。ただの雰囲気モノに終わらない、確かな手応えを残すバンドだ。
続いては摩訶不思議なバンド名を冠する狐の会。やがて聴こえてきたのは、つぶやきとも囁きともいえる、しかしかなりのエグ味を伴った、もはや語り部に近い歌。バンドは平熱感と規則正しい呼吸を保ち続け、なんとも奇妙な興奮が会場を覆う。聴き手を安易に躍動させない、目に見えない力がそこには確実に働いていた。ヴォーカル・狐の鋭い瞳には一体何が映っていたのか。
3組目はヴォーカル&ギター・大森元気のひとりユニットになった残像カフェ。4人のサポートを加え、圧巻のバンド・サウンドで会場の空気をガラリと変える。甘酸っぱさと切なさを宿した、カラフルなパワーポップを次々と披露し、かつての和製フォーク・ロックのイメージを、いい意味で覆していく。音を奏で歌うことの楽しさを聴き手と共有する喜びに溢れた新生・残像カフェは、以前よりも頼もしく、眩しい。
ラストは真打ち・HARCOがギターレスの4ピースで登場。少年っぽさを宿しながら、ほどよくビターな歌声は変わらずだ。中盤で披露された話題のCMソング2曲を“マスメディアティックな企画モノ”と、はにかんでみせたが、エヴァーグリーンかつ生命力に溢れたそれはやけに伏せ目がちの音楽が主流の今、とても新鮮に響く。リスナーのキャリアを問わない、ベテランならではの包容力を感じさせるステージだった。
独特な、ともすると異形のように見えるバンドと、正統な伝え方を楽しみながら全うするユニット4組の競演。しかしどちらにも共通するのはポップなものへのこだわりだ。あくまでもフリースタイルを貫きながら自分の心と聴き手に真摯であろうとする、そんなミュージシャン達の底力を感じさせるイヴェントであった。
(Text: 篠原美江/Photo: 江隈麗志) |
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東京が音楽シーンの中心だと思っている人は多いだろう。確かにそうだ。しかし、京都・大阪・福岡など地方から発信される音楽もたくさんある。愛知県岡崎市に所在するCAM RECORDSもそのひとつだ。地元で活躍している硬軟両方のバンドを取り揃え、この場所で作られる音楽を全国に届けたいという思いで発足したレーベル。その彼らの熱い気持ちが、ヒシヒシと伝わってきた一夜だった。
トップバッターはnote。「オフェンス」で幕を開けたステージは、突き抜けるように小気味よいドラム、ブンブン唸るベース、エモーショナルなギターが、テレキャスターを弾きながら歌う真田の声に、ヘビのように絡みつく。何度も出てくるキメの部分がカッコよくバシバシ決まり、息をもつかせぬテンションでグイグイ引っ張っていく。次に、noteのハイテンションをクールダウンさせるべく登場した、チビロク☆ジャンボ、と思いきや、アコースティックギターで2曲歌ったあと、エレキギターに持ち替え、サポートメンバー (D,B,Key)と「サルガ☆ロック」を熱唱。脱力するようなユーモラスな歌詞に微笑み、癒され、しばし空気が和む。続いて登場のスーパーストロングマシーン。金髪、裸足のボーカリスト・新山のエキセントリックな歌、ラウドな音に負けじと切ない音色を響かせる石川のアコーディオン。サポートメンバーと繰り出すサウンドは、新山が感じさせる和風のテイストと相まって、独特な雰囲気を醸し出す。コアなファンが「桜並木道」を口ずさんでいた。4番手は左利きのドラマーを擁するredballoon。男気を感じさせるボーカル・ギター・村屋のストレートな言葉、「GIFT」から「スターライト」への、なだれ込むような怒濤の展開。エネルギッシュな演奏と、最後に村屋がギターをフィードバックさせて、ステージを降りたのが印象的だった。
トリを飾るのはチャンバワンバの「タブサンピング」に乗って登場の4人組PEACE!! 歌詞を優しく丁寧に歌い上げる、ハイトーンボイスの北川と、音楽を演奏していて楽しくて仕方がない、と体で表現しているメンバー。「東京駅」「歌う木の下で」など、静と動を使い分け、ファンを楽しませていた。
(Text: 山本いずみ/Photo: 江隈麗志) |