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モンゴル800を擁するレーベル・HIGH WAVE。沖縄から熱く元気な音楽を発信し続けるHIGH WAVEが2005年のin the cithで東京に届けるのはやはり“熱い”バンドたち。冬の足音がすぐ傍までやってきていた渋谷だけれど、チェルシーホテルの中は“夏”真っ盛りとなった。
トップバッターはスカイメイツ。ホーン隊のダイナミックな音を武器にしたスカをベースに、緩く心地好いオーセンティックなものから激しく身体を揺らすスカパンクまで、幅広く取り入れた独自のサウンドが魅力の彼ら。その多面的なサウンド・ワールドで、穏やかな沖縄の風のような雰囲気から灼熱の南国ビートで熱風を送りこんだり。会場の空気をくるくると変え、観客のハートを鷲掴みにしていった!2番目はBLEACH。ライブバンドとして日本のみならず海外でも人気の高い彼女たちは“ガールズバンド”とは思えない轟く爆音とパワフルな演奏でチェルシーホテルを飲み込んでいく。ギターのカンナ独特の妖艶な音階のメロディに聴覚が右へ左へと揺さぶられれば、ベースのミヤのデスボイスさながらのボーカルは全身に叩きつけるような迫力。疾風怒濤のライブパフォーンマンスで会場を熱く焦がしたのだった。最後はThe Roots元メンバーであるマーティンルーサー。彼はHIGH WAVEからのリリースが決まったばかり。オールドスクールを思わせる骨のあるロックンロールナンバーに乗せて、届くボーカルは卓越した表現力とパワーに満ち、オーディエンスのハートを次々に奪っていく。日本のアーティストでは成しえない、生まれ持った血が全身で鳴らすソウル溢れる音楽は、in the cityの最終日に“アメリカ”という刻印を刻みつけた。沖縄から、そしてアメリカから。海を越えて流れ込んだ風に、この夜、耳だけでなく頭も身体も熱を注入された気がした。やっぱり音楽は“熱い”のだ!!
(Text: えびさわ なち/Photo: 江隈麗志) |
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歌や声を大事にしているアーティストたちを集めた、というこの日のブレイク・スルーによるレーベル・ナイト。扉を開けたらいきなりの満員で、歌の良さを求めている人のあまりの多さに考えさせられてしまった。やっぱりいきつくところ、肉声なのかと。
トップは千葉県は習志野高校の仲間によって01年に結成された5人組のえちうら。ベタなまでにストレートな歌詞とわかりやすさの極致をいったようなメロディは、時に聴いていて恥ずかしくなるほどだが、彼ら自身はいたって爽やかで真面目。そこにまったくのウソがないことが何よりの説得力となっていることに気づかされた。
二番手は佐藤ひろこ。普段はストリート・ライヴもこなしているシンガー・ソングライターだが、この日は路上でやしなった情感たっぷりの歌を存分に聴かせてくれた。大きなギターを抱えて歌う姿は可愛らしくもあり、カッコよくもあり。歌の世界同様、色々な表情を持つシンガーなのだろう。
既に多くの作品を発表してきている下川みくにが三番手。近年は作詞作曲もこなしている彼女だが、この日は布袋寅泰のバックも務めるメンバーなどを引き連れ、自作の曲をより丁寧に披露。いわゆる“癒し系”という印象を与えるアーティストではあるし、実際に彼女の作品には思っていた以上の深みが備わっているが、それ以上の器の大きさをメリハリあるヴォーカルに感じることができた。
そして大トリは来年結成10周年を迎えるBaby Boo。こんな小さなハコでライヴをやること自体がもはやかなりレアとあって、熱心なファンでいつのまにかギッシリだ。でも、いつまでも初心を忘れずにリスナーと近いところで歌を届けようとするのが彼らの魅力。いわゆるコーラス・グループというイメージのある彼らだが、実際は瑞々しさはまったく失われることなく、聴き手一人一人の心の中にすっと染み渡っていくようなハーモニーと躍動感のあるメロディで心地よいグルーヴの中へと誘っていった。
普段、このテのライヴ・ハウスにはこなさそうなタイプのリスナーの姿もチラホラ見かけたこの日。踊り狂って騒ぐだけがライヴではないことを痛感した人も多かったのではないだろうか。
(Text: 岡村詩野/Photo: 江隈麗志)
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