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この夜イベントをクリエイトした“1242”とは、オールナイトニッポンでお馴染みのニッポン放送!毎日が音楽のお祭り騒ぎのようなラジオ局のイチオシのアーティストが一同に介するとあって、会場は満員御礼だ。扉を開けるとそこは人!人!人!! そんな満員のオーディエンスの前に最初に登場したのはジャンクルーズ。ダイナミックかつメロディアスなサウンドを聴かせる彼らは、海と航海をテーマに音楽を作るバンドとあって、チェルシーホテルは一気に真夏の爽快な空気に包まれた。
続いてステージにはテレビCMで話題沸騰中の少年カミカゼ。カズノリとSaCoの男女ツインボーカルのゴキゲンなボーカルが、パンキッシュでパワフルな楽曲に乗ればフロアは大激震。ファンは軽快にステップを踏んでステージから溢れ出す音の波を全身で楽しんでいる。メジャーデビュー曲『ココロアンテナ』はヘヴィなリズムにエッジの効いたギターリフが印象的なパワーとポップの混在するナンバー。ファンは大きくジャンプしながら、彼らと共に歌っていた。こうして関西在住の彼らは“ハッピーな歌たち”という武器で、このチェルシーホテルに確かな足跡を残していった。この夜、3番目に観客の前で歌を届けたのはThe LOVE。92年に結成された彼らの放つシンプルな3つの音は、重なると心に温かく届けられるのが特徴。9月に発売したばかりのアルバム『彩愛』の中からの曲も含め、全5曲の素朴で叙情的だけれど力強く胸に広がるハートフルな歌たちで会場を優しく包み込んでいった。
そして最後にステージに姿を現したのは“数千ものオーディエンスを沸かせる”と音楽シーンを騒然とさせている21世紀の超新星・乙三。これ、“オッサン”と読む。この日、彼らを見るために会場にやって来た観客の中にはチビッコの姿もアリ。幅広い観客層に人気のバンドであることが伺える。サウンドは一聴して簡単に判断は出来そうにないけれど、なんとも魅力的な曲の数々。歌謡曲?ポップス?それともファンク?ジャズのテイストも感じられる乙三独自の世界が繰り広げられ、会場は笑顔、笑顔。笑顔でいっぱいに。さらに彼らのセカンドシングルである『仮初小学校』では、タレントで歌手の島崎和歌子が登場。ボーカル・大竹とのデュエットソングでフロアを湧かせた。ニッポン放送プロデュースのレーベルナイトは個性溢れるエンタテナーが集結して全身全霊で笑顔になれる、そんな夜だった。
(Text: えびさわ なち/Photo: 江隈麗志) |
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なんだか懐かしいなあ、とトップバッターのSPランチを見て感じた私はイカ天、ホコ天ブームをリアル・タイムで知っている世代。あの頃、原宿の路上にはこういう若い女のコたちのバンドもいっぱいいたものだ。その頃の熱気が今ここに新たな世代に引き継がれて甦っている。女の子バンドを集めたロケットガールズによるこの日のレーベル・ナイトは、まずそんな甘酸っぱい気持ちと共に始まった。
トランペットとサックスのメンバーを含む大所帯バンドのSPランチは、スカ・パンク、ファン・パンクを取り込んだ大阪の賑やかな7人組。ツイン・ヴォーカルでリズムをつけながら盛り上がる様子は、さながら女子高生がカラオケやパーティーでハジけているような感じで、10代が遥か遠い昔となった者にはその若さがあまりにも眩しい。バックのベース、ドラム、ギターの3人がなかなか達者なのがいい。結構鍛えられているとみた。
小柄で元気いっぱいのヴォーカルが目を引くコンコンジャンプはテレビ番組のタイアップつきシングルが出たばかりとあってこの日の出演者の中でも人気の点では1枚上。場慣れしたトークやノリでグイグイと引っ張っていくので、たった30分程度のステージでも、終わった頃には2時間分を一緒に全力疾走したような満足感を得られた。
ゲストとして3番手に登場したのは、シャープな視線を飛ばしながら翳りある歌世界を聴かせる藤井万利子。いつもは一人で歌っているそうだが、この日はバック・メンバーと共に表現力のあるところを見せつけていた。椎名林檎やアラニス・モリセットといった風格ある女性シンガーに近い感触ながら、女性らしいふくよかな表情が魅力だ。
最後は、個人的にこの日圧倒的な輝きを感じた東京ピンサロックス。その名前から誤解されることも少なくないだろう彼女たちだが、実際は、バッファロー・ドーターあたりにも似たプリミティヴなグルーヴ感とダイナミズムで自然と体を横に揺らせることが出来るこ頼もしい連中。打ち込みを利用したエレクトリックなサウンドと生々しいリズムとのミスマッチが見事に融和しており、ドレッド・ヘアを振り乱しながら時にボコーダーを併用して摩訶不思議な歌を聴かせるヴォーカルのセンスの良さにまだまだ多くの可能性を感じた。またぜひライヴに足を運びたいものだ。
終演後のグッズ・コーナーは人だかりの山。出演者たちも一緒になってCDやTシャツを販売していたのが微笑ましかった。
(Text: 岡村詩野/Photo: 江隈麗志) |