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レーベル名と、RAMONESの名曲を引っ掛けたイベント『電撃VAP』。出演アーティストのジャンルは見事なまでにバラバラだが、一貫して「魂」を感じさせてくれた。
一番手のEDGE OF SPIRITは、ARCH ENEMY来日公演の前座も務めた、実力派デス・メタル・バンド。ブルータルで安定した演奏と、気合い入りまくりの咆吼で、オーディエンスを圧倒。単なる勢い一発のデス・メタルではなく、かなり考えて作ったんだろうな…と思わされるギター・リフに好感を持った。
続くタテタカコは、一転してエレクトリック・ピアノ弾き語りスタイルの女性シンガー。しかし、彼女のシンプルな「うた」には、心が震えた。ノスタルジックで美しいメロディと、ボーイ・ソプラノっぽい歌声に乗せて綴られるのは、繊細さも優しさも棘も毒も含んだ、とてもリアルな言葉たち。そして、一つ一つの言葉を宝物のように大切にして、真摯に歌う姿に惹かれた。ラストは、映画『誰も知らない』のクライマックスを彩った名曲「宝石」。涙が溢れてきた…。今後も追い続けたいアーティストだ。
次はザ・コブラツイスターズ。一言で言えば「和風ギター・ロック」。フロントの3人がハッピを着て、ヴォーカリストは三線も弾き、音頭を思わせるトライバルなリズムがオーディエンスを楽しく踊らせ…といった具合に、お祭りモード全開のステージだ。子どもの頃、近所の神社のお祭りに行った時の高揚感を思い出した。
トリを飾ったのはアニマルズ。小島の元メンバーを擁した、10人編成の大所帯バンドだ。この10月にデビューしたばかりだが、キャリアのあるメンバーが集まっているだけに、演奏は極めてタイトで、観客を煽るのにも長けていた。ハードコア・パンクをベースに、スカやラップも取り入れたサウンドを、豪快に、そして軽快に畳みかけ、大団円に相応しい盛り上がりぶり。首を振ったり、拳を振り上げたり、ユラユラと踊ったり…と、色々な楽しみ方のできるステージは、実に爽快だ。
4つの魂が火花を散らした『電撃VAP』。とても幸せな気分になった。
(Text: 池田洋行/Photo: 江隈麗志)
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「ニューロックの夜明け」と題されたこの日のステージに上がったのはザ・サイクロンズ、ザ・ヤング(+渚ようこ)、騒音寺の3組。GS、ファンク、歌謡曲、ロックンロールとそれぞれの立ち位置は違えども、日本語と外来のリズムとの間の齟齬が生み出す独特のグルーヴ感を追求し、あるいはその隙間から零れ落ちる叙情性をテーマにしているという点で共通項を見出すことができる3組と言える。例えばそれは、ザ・ヤングのステージにゲスト出演した平成歌謡の歌姫・渚ようこが阿久悠作詞のナンバーを取り上げていたことに象徴的だろう。
そんな3バンド+1人の中でも圧巻だったのが、9月に5作目となるアルバムをリリースした騒音寺。精力的なツアーが功を奏し、東京でも熱いファンの波が広がりつつある彼らだが、この日のステージでもロックンロールのバカバカしさ、歌謡曲の切なさ、ブルーズのやり切れなさ、その全てを呑み込んで、NABEの描き出すキャラクターがステージの上を活き活きと飛び跳ねる。その様子に腹を抱えてゲラゲラ笑い、汗だくになって踊る観客。ステージとフロアが生み出す熱量は間違いなくこの日のハイライトだった。
単純に曲や演奏の善し悪しだけでなく、MCも含めエンターテインメントに徹底的に殉じる騒音寺のスタンス(だからといって媚を売っているわけでは決してない)は、“客を楽しませる”ということに対する彼らなりの切実で、誠実な思いの裏返しであり、まさにプロ根性の証。そうした姿はもちろん騒音寺に限らず、この日屋根裏のステージに上がったザ・サイクロンズ、ザ・ヤング、渚ようこにも共通するものだ。メジャーとインディーの垣根が曖昧になり、誰でもステージに上がれるようになった時代だからこそ、彼らのような姿勢が“新しい”のではないか、そんな思いに駆られた一夜だった。
(Text: 藤倉 淳/Photo: 江隈麗志)
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